「インコネル」とはスペシャルメタルズ社という会社が商標登録している超耐熱合金のことで、過酷な使用環境に耐えられることを目指して開発されました。インコネルは他の金属とはかけ離れた、優れた高温特性を持っています。
そこで、この記事ではインコネルとはどういうものなのか、その特性や加工するポイントについて詳しく解説します。難削材ともいわれるインコネルについて正しく理解するために、最後まで読んでみてください。
インコネルとは？
「インコネル」という金属の名前を聞いたことがあるという方はいらっしゃるでしょうか。特定の分野に精通した方でない限りあまり聞きなじみのない名前ですが、インコネルとはスペシャルメタルズ社という会社が商標登録している超耐熱合金のことです。
インコネルの成分の50%以上はニッケルで、そこへ鉄やクロム、炭素が加えられて作られています。過酷な使用環境に耐えられることを目指して開発されたインコネルは、高温特性に着目されています。
そのため、超高温環境下となる火力発電所や原子力発電所、ごみ焼却炉といった場所で多く利用されています。また、航空機のジェットエンジンや、F1の排気を司るエキゾーストといった高温化での高い性能が求められる場所でも、インコネルは利用されているのです。
インコネルの特性とは？
優れた高温特性を持つインコネルですが、より理解を深めるために詳細な特性についてご紹介します。
高温下で高い耐酸化性がある
クロム化合物を高温下に置くと、通常であればクロム炭化物が析出し始め、クロム濃度が徐々に低下していくため、腐食して酸化しやすくなります。しかし、インコネルは650～900℃の高温下にたとえ50時間放置され続けたとしても、酸化することがありません。このように、高温下で高い耐酸化性のあることが認められています。
非常に優れた耐食性がある
インコネルはニッケルに鉄やクロム、炭素の他にも合金としての特性を高めるためにさまざまな元素が加えられています。そのため、海水や酸・アルカリ性の液体の中、薄い大気といった腐食しやすい環境においても、非常に優れた耐食性を表すのです。腐食しないばかりか、極めて小さな孔が空いたり、隙間だけが腐食したり、溶接時に割れが生じたりすることすらも防止します。
優れた耐クリープ性がある
耐クリープ性とは、高温下で荷重をかけ続けても変形が起こりにくい性質のことをいいます。インコネルはこの耐クリープ性が高いので、継続的に荷重をかけられても歪みが発生しにくくなっているのです。そのため、長時間高温にさらされながらも、高い強度が求められるロケットエンジンやF1の排気部分であるエキゾーストに利用されています。
難削材インコネルを加工するポイント
インコネルは優れた高温特性を持つがゆえに、難削材といわれることもしばしばあります。そんなインコネルを加工する際のポイントをご紹介します。
工具選定にこだわる
インコネルを加工する工具は、耐摩耗特性に優れた特殊なコーティングが施された超高合金でできたものを選ぶ必要があります。そうでなければ刃先がすぐに摩耗して、一瞬で寿命を迎えて使い物にならなくなってしまうことになります。
工具の形状は、「強ねじれ刃」や「多刃」、「ポジティブすくい角」といったものを選びましょう。切削時の負担をできるだけ軽減できます。常に目的に応じた最適なものを選ぶことが求められます。
熱をこもらせない加工を行う
インコネルは刃先に熱がこもりやすいため、一般的には多刃工具を利用するのが良いとされています。この多刃工具を利用する際には、回転数をできるだけ上げるなどして熱をこもらせない工夫が欠かせません。
ただ、インコネルは工具材料との親和性が高くなってしまうため、加工している間に溶着することがあります。きれいな断面に仕上げるためには、さまざまな条件で加工に挑戦して、インコネルに対するその機械の最適な設定を探る必要があります。
まとめ
インコネルとはスペシャルメタルズ社が商標登録しているニッケルに鉄やクロム、炭素が加えられた超耐熱合金のことです。その特性として挙げられるのは、高温化で高い耐酸化性があることや非常に優れた耐食性があること、優れた耐クリープ性があることです。
このように優れた特性ゆえに難削材ともいわれるインコネルですが、加工する際には、工具選定にこだわることが必要です。またそれだけでなく、熱をこもらせないように工夫しながら、その機械の最適な設定を探る必要があります。
「株式会社ISS西川機械」では、確かな技術力としなやかな発想力を武器にさまざまな機械加工を承っております。弊社では現状に満足することなく、常に新しい技術の確立を目指しています。難削材といわれるインコネルの加工についても承っておりますので、ぜひご相談ください。単品・試作から小ロット品まで、お客様のさまざまなご要望に柔軟に対応いたします。お問い合わせをお待ちしております。