特殊鋼(炭素鋼、合金鋼、工具鋼、ベアリング鋼)

「特殊鋼」の特性と加工方法

特殊鋼というものをご存じでしょうか。一般的に鋼は鉄に炭素を少量混ぜたものですが、特殊鋼とは炭素以外の様々な元素を混ぜて作ります。加える元素によって特性や用途が分かれ、それぞれにメリットがあります。今回は代表的な特殊鋼について解説していくので、ぜひ参考にしてください。

特殊鋼とは

鋼(普通鋼)は鉄に0.02~2%ほど含む鉄の合金ことを指します。これに対して、他の元素を加えたものが特殊鋼(合金鋼)です。鋼が持つ性質を改善したりより活かしたりすることで、さまざまな用途に適応させることに成功しています。特殊鋼は、含まれる合金元素の量によって以下の3つに分けられます。

名称

含まれる合金元素の量

低合金鋼

5mass%以下

中合金鋼

5~10mass%

高合金鋼

10mass%以上

特殊鋼を作る目的

加える元素によって鋼の強度や高度、耐食性、耐熱性といった特性をより活かすことに繋がります。鋼を使う目的に合わせて特殊鋼を作り出し、より適合した素材を使って品質向上を図っています。

特殊鋼の種類

主な特殊鋼の種類や特性、用途について説明していきます。

炭素鋼

炭素鋼はその名の通り鉄と炭素の合金であり、炭素の含有量は0.02~2.14%までと定められています。炭素の他にマンガンやケイ素、リン、硫黄などの物質を含んでいますが、性能を考えて添加されるというよりは製造時に含まれてしまうものが多くなっています。

含まれる炭素の量が多くなると強靭で硬くなり、力を加えても変形しにくくなる点が特徴的です。その一方で、耐えられる範囲より大きい力がかかった際に一気に砕けるなど力を逃がす性質が失われ、脆くなってしまう傾向があります。

炭素鋼は特殊な元素を添加したり加工したりしていないため、含まれている炭素の量が0.6%以下のものは普通鋼に分類されます。0.6%以上の高炭素鋼は硬くて丈夫であるため、強度が求められる工具の材料に使われるのです。

合金鋼

合金鋼は炭素鋼に炭素以外の合金元素が加えられた鋼のことです。含まれている合金は主に以下のようなものがあり、それぞれISO規格によって下限値が定められています。

・アルミニウム
・コバルト
・クロム
・銅
・チタン
・鉛
・ニッケル
・バナジウム

合金鋼という言葉は幅広い鋼を指す時に使われ、含まれている合金元素によって種類が変わり特性や用途も大きく変わります。炭素鋼に比べ高価な分、強度や硬度など性能面で優れているものが多くなっている点が特徴的です。

主な合金鋼はクロムの含有量が10.5%以上のステンレス鋼やシリコン・マンガンを加えた高張力鋼、クロムとモリブデンを含むクロムモリブデン鋼など多種多様です。

ステンレス鋼は耐熱・耐食性に優れ加工しやすいことからキッチンのシンクなど家の設備に使われることもあります。高張力鋼は高い強度と引張強さを誇り、建築や電車、船、自動車などを作る時に活躍するものです。クロムモリブデン鋼は強度だけでなく耐熱性・靭性が高いため、溶接が容易です。エンジンやボルト、ナットなど身近な部品に使われることが多くなっています。

工具鋼

文字通り工具に用いられる工具鋼は、金属やその他の物質の切削、塑性加工に使われます。やすりやかみそり、カッターといった身近な道具から、ドリル、たがね、ポンチなどの工具までその用途はさまざまです。含まれる合金元素の種類や量が多くなるほど丈夫になり耐久性も高まりますが、その分高価になるというデメリットがあります。

ベアリング鋼

ベアリング鋼は軸受鋼とも呼ばれ、クロムを1%程度含んでいる場合さらに高炭素クロムベアリング鋼という名称になります。非常に摩耗性に優れた鋼材であり、軸受に使われるのが一般的です。軸受はその性質上どうしても摩擦が避けられません。重い荷物を載せたり動かしたりした時に車輪と転動体の間に大きな力がかかってしまうため、それに耐えられる素材として使われています。

特殊鋼の加工法

特殊鋼はさまざまな方法で加工されます。主なものは以下の通りです。

加工法

説明

鋳造

特殊鋼を溶かし、型に流し込んで固める

圧延

特殊鋼を回転しているロールの間に通して変形させる

鍛造

叩く・潰すなどの圧を加えて形を変形させ、整える

切削

切る・削るといった工程によって形を変える

絞り

型に押し込んで変形させ、立体的な形を作る

打ち抜き

特殊鋼を薄い板状に伸ばし、型を使って打ち抜く

接合

溶接や摩擦等により特殊鋼を繋ぎ合わせる

こちらで紹介しているのは一例です。このようにさまざまな加工を施して特殊鋼の性質を活かし、機械の部品や容器、食器、カトラリー、缶詰、タンク、CDディスク、ネジ、歯車など様々なものづくりに応用していきます。

まとめ

特殊鋼の種類や特性について紹介しました。一口に鋼といってもさまざまな種類があります。それぞれ強度や硬度、展性、耐食性などが異なるため、性質を理解して様々な部品やパーツづくりに応用していくことが重要です。「株式会社ISS西川機械」は現状に満足することなく、どんどん新しい技術を導入している会社です。金属加工でお困りのことがある方は、ぜひ一度お気軽にご相談くださいませ。