普通鋼

「普通鋼」の特性と加工方法

私たちの暮らしを支えるために、多くの金属が建物や構造物に使われています。普段の何気ない生活の中で、たくさんの鉄鋼材料が活躍しているのです。その中でも、加工しやすくて市場で多く流通されている普通鋼は、そのままの素材で使うこともでき、さらに昔からコストパフォーマンスの高いと人気があります。

普通鋼とは?

普通鋼は、鋼の5元素とも言われる炭素をはじめ、ケイ素、マンガン、リン、イオウの化学成分が含まれている鉄鋼材になります。炭素の含有量によってJIS分類されており、鉄鋼材料の中でも加工がしやすいため一般的に多く使われているのです。目的に応じて切断や溶接をするため、熱処理をしていないそのままの素材で使われることから、別名「ナマ材」とも言われています。

これら普通鋼に、クロムやニッケルなどの他の元素を加え、熱処理をすることにより強化させたものが特殊鋼です。普通鋼に加える元素によって新たな特性を生み、それらを特殊鋼として使うことによって、より幅広い現場で使われています。普通鋼と特殊鋼の大きな違いは、「熱処理」をしているかどうかという点です。

特殊鋼は、熱処理をしてカスタマイズする元素によって特性は変化します。しかし、普通鋼の役割として特殊鋼のベースとなるだけではなく、現場で活躍する鋼材として幅広く使われているのです。

JIS分類による使用目的と特徴について

普通鋼は、日本産業規格のJISによって細かく分類されます。JISの規定を元に、鋼材の形状や用途などによって、使用目的に合わせた振り分けになっているのです。ここでは、JIS分類による使用目的と特徴について説明します。

知名度No.1の一般構造用圧延鋼材

SS材として多くの現場で活躍している一般構造用圧延鋼材は、幅広い用途で使われる鋼材として知名度が断トツです。鋼材の中でも不良品が少なく加工しやすいため、ビルや工場、建築物など、さまざまな現場で使われています。中でもSS400は、安価でたくさん流通しているため、手に入りやすい材料です。

SS400は現場での使用頻度も高く、価格の安さ入手しやすさが目立ちます。しかし、耐熱性はあまり高くなく、炭素の含有量が少ないため熱を加えるこが難しいですが、加工をしなくてもそのまま使用することができます。また、加工しやすいため部品などにも使うことができ、幅広い用途で使うことができるメリットがあるのです。

船舶用の溶接構造用圧延鋼材

造船に欠かせない鋼材として開発されたため、溶接性の高さが魅力のSM材として、多くの現場で必要とされています。SM材は溶接構造用圧延鋼材と言い、船舶用にとどまらず、その活躍は社会インフラを支えるパイプラインや、多くの産業機械などにも使用されているのです。SS材には化学成分の規定がなく、溶接性の保証がありません。

しかし、SM材はマンガンやシリコンなどを加えられている鋼材ですが、リンと硫黄の含有量比率がSS材に比べて少なくなっており、溶接性の高さにつながっているのです。SS材と添加成分は似ていますが、船舶のように重要な溶接性を必要とする現場では、化学成分の規定のある、溶接性の高いSM材が使われます。一昔前の造船の現場では、鋼材を重ね合わせて釘などで打ち付け固定していました。しかし、それでは船体が重くなり、より軽量化を目指すうちに開発されて現れたのがSM材なのです。

普通鋼としてからはじまり、開発されることによって、溶接性の高い鋼材として、船舶用以外でも多くの現場で活躍しています。

ボイラー及び圧力容器用鋼板

SB材は、高温にさらされても問題なく形状を保ち、ボイラーなどで使用することを目的とした鋼材です。ボイラー及び圧力容器用炭素鋼と言われている鉄鋼材料で、SM材と同じように溶接するために開発されていますが、特に重要な現場で使われています。ボイラーなどに使われるため、高温で稼働しても黒くならずに、安心して使えることが求められます。

その点SB材は、SM材よりも熱に強く、マンガンを多く添加しており、耐熱温度は400℃を目安として使えるため、ボイラーの部品として安心して使うことができるのです。しかし、硬度が高いのが特徴なため溶接性が低く、厚い板を溶接する時には、十分に熱を加える必要があります。ボイラーに必要な部品として使われるため、400℃の高温にも耐えられるよう想定してつくられています。SB材によって、産業機械を支えることができ、今の暮らしや産業を成り立たせているのです。

冷間圧延鋼板および鋼帯

車の板金やカメラなど、多岐にわたり使われるSPCC材は、曲げることはもちろん、プレスやしぼりなどの色々な加工に適した素材です。SS材よりも炭素量が少ないため、他よりも柔軟性を持ち合わせています。そのため、安価なのにも関わらず、加工性や成形に優れた材料として、さまざまな現場から必要とされているのです。

SPCC材は冷間圧延で施されて制作されているため、冷間圧延鋼板とも言われています。また、未研磨のままでも材に光沢があることから「ミガキ材」とも言われ、他にも「圧延材」や「コールド」と言った呼び名もあります。加工性などに優れていてツヤもありますがサビやすいため、塗装やメッキ加工をするなど、しっかりと対策をしなければなりません。

それでも色々な現場で欠かせないSPCC材は、時計やカメラのような小型のアイテムから、板金に最適な素材として車分野のような大型のアイテムにも、幅広く使われる鋼材料なのです。

まとめ

さまざまな現場で使われている普通鋼は、経済活動には欠かせないアイテムとして、日々の暮らしやインフラなどを支えてくれています。安価で加工しやすい魅力がある一方、細分化された目的に合わせてそれぞれの特性を活かすことができるのも、普通鋼だからと言えるでしょう。目的によって開発され、適材適所のように現場で活躍してくれる欠かせない鋼材として、昔も今も普通鋼は取り扱われ続けているのです。

「株式会社ISS西川機械」では、長年の知識と技術力を武器に、さまざまな機械加工を承っております。材料から加工まで、お客様へご満足いただける高品質の部品を提供しております。お客様のご要望に応じた普通鋼の加工についても承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。